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第39弾「里山の交通事情」

  • 2014年1月12日(日) 16:33 JST
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リレーエッセイ

私は毎日のように峠道を車で通勤しているため、普通に通勤している方より多くの動物を見ていると思います。
車の前を鼠から大型哺乳類まで様々な動物が横切って行くのを観ました。
それだけに道路上では亡骸もよく観ます。やはり多いのはタヌキやアナグマなどのイタチ類のように感じます。
車の前に飛び出してきた時の様子はタヌキは立ちすくみ、イタチ類はパニックになって右往左往することが多かったです。
タヌキは外傷が無いように見えるのですが多くは後頭部を強打しているようです。
以前バスで通勤していた時のこと、バスを降りて帰り道を家に向かって歩いていると住宅街の細い道の真ん中に丸々と太ったタヌキが横たわっていました。「あっ、タヌキが撥ねられてる」と何気なく見ていると少し離れた塀の陰から小さな瞳が3つ・・・子ダヌキが3匹、綺麗に並んで母親であろう動かぬタヌキを見つめていました。
・・・何とも印象的な光景でした。
もしタヌキと言葉が通じるとしたら何と声を掛けてあげたらいいでしょう?私には言葉が見つかりません。

初夏の穏やかな日の昼下がりのこと。
仕事が半日で終わったので鼠を撮りたいと思い通っている神社に仕様変更してもらったセンサーカメラの設置にやってきました。
既に一ヶ月以上前から鼠の糞尿を確認しているにも関わらずその姿を捉えるには至らず・・・
もはや諦めの気持ちを持ちつつカメラを弄っていた所・・・
なにやら鳴き声が・・・
んん?っと振り返ると、何とアナグマが鳴きながら走ってくるではありませんか!
えっ?ア、アナグマ??と思いつつカメラをアナグマに向け、早い段階でファインダーに捉えたもののピントが・・・
なかなか合わず、ようやく撮れた時はほぼ目の前の階段を駆け上がっている所。



走ってくる時の鳴き声は「プギーッ、プギーッ」というちょっと甲高い声だった・・・と記憶しています。
まるでようやく巡り会えた母親に喜んで鳴きながら一生懸命駆けてくる、そんなふうに感じました。
しかし足元まで来て私を見上げ、「違う」と思ったのでしょう・・・
向きを変え今度は神社の内側からガラス戸に向かって「ギー、ギー、ギー」と少し低めの声で不満そうに鳴いていました。
するともう一頭のアナグマが同じルートで鳴き声に導かれるように走ってきました。
しかしそのアナグマは目を丸くしている私と顔を合わせた途端に足を止め不安そうに見つめていました。
その後二匹は合流し、茂みに戻って行きました。
ですが、まだ近くに居たので写真を撮っていると・・・



この後、また足元に走ってきました。その姿がまるで子犬が駆け寄ってくるように見えました。
小学生だった時に学校の帰り道で子犬が付いてきて家までやってきたことがありました。
牛 乳を与え、親に「飼いたい」と話すと、のび太のお母さんと同じ答えが帰ってきたと思います。でもドラえもんは居ません。私はその子犬を裏切りました。「犬 と猫と人間と」というドキュメンタリー映画で保護団体の方が「犬は裏切らない、裏切るのは人間だけだ」と言っていましたが本当その通りです。
その子アナグマが自分に向かって走ってきた時、その瞳は信じていたと思います。
ほんとは「カワイイ、カワイイ、よしよし」と撫で撫でしてあげたい所でしたが・・・
付いて来るようになっても困りますし、人に懐いてもらってもいけないので・・・
不干渉で・・また裏切ってもいけないので・



再び2頭は合流して行きました。
2頭は離れた後に合流するときにはお互いを確かめ合うように顔を合わせているのが印象的でした。
この日、私は黒っぽい靴と茶色っぽいズボンを履いていたのでその足元の姿がアナグマと似ているように見えたのか?とも思いましたがただ動いているものに反応しただけかもしれません。
時間にしてほんの5分ほどの出来事でその時は呆気にとられていましたが今思うと貴重な体験でした。
もしあの幼いアナグマと話が出来たとしたらきっと「お母さんはどうしたの?」そして「車には気をつけて」と声を掛けていたかもしれません。

岡本 毅(おかもと つよし、石川県在住)

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