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第42弾「Tama Zoo のカヤネズミ展」

  • 2014年7月11日(金) 20:16 JST
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リレーエッセイ
 

この度、カヤネズミ展及びシンポジウムが多摩動物公園で開催されることになりましたが、そこに実はちょっと期待を持ってもいいのかな、と私は思っています。
今でこそ環境教育の場と認識されるようになった動物園は、それでもまだ、多くの来園者にとっては憩いの場であり、エンターテインメントの場でもあります。
もともとそれほど生物や環境などに興味の無い人でも、家族や友人、恋人同士でふらっと来園し、それでいやがおうにも企画展と博物広告に目がいくものです。
 動物園からのこうした情報発信は今に始まったことではありませんが、自分たちを取り巻く世界が人間だけではないあらゆる生き物で構築され、常に変化していくという美しくも厳しい現実を見つめることが出来る、一番手っ取り早いきっかけになるので、今後も続けていきたいと思っています。
 

カヤネズミは他の野ネズミと比べて、1.あまり人を怖がらない、2.動きがさほど素早くない、3.捕獲されても反撃しない、と感じます。
尾の短いずんぐりしたハタネズミや小さなハツカネズミでさえ、尾をつかまれるとキーキー叫んで向き直って噛みついてきます。
アカネズミやヒメネズミなどは尾をつかむのはまず無理、目にも止まらぬほど上下左右を敏捷に逃げ回り、もちろん「窮鼠“人”を噛む」は同じ。
ひときわ「のんびり感」ただようカヤネズミが、なぜ現在まで生き残ってこられたのでしょうか?
それはやはり、彼らが選んだ生息環境のおかげだろうと思います。
イネ科の草が茂る3次元空間は質量の軽い生き物の楽園であり大型の天敵はあまりいませんし、危険を感じれば慌てずとも奥へ奥へと隠れられます。
木本植物類が入る余地の無い、変化しやすい不安定な環境であることも幸いしたでしょう。



そんな草地もカヤネズミも今存亡の危機にさらされているという事実は、人の暮らしにおける様々な価値観が、ここにきてまた大きな転換期を迎えているように思えてなりません。
動物園での企画展やシンポジウム開催がどれほどの意味があるか分かりませんが、人の経済社会と環境変化の狭間で生きる彼ら小さな生き物たちの、たくましさとはかなさを、今展示とシンポジウムで感じてもらえる場となれば、それでまずは充分であろうかと思っています。

松本 晶(まつもと・あき、多摩動物公園)(文・画) 

 

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