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第44弾「夜の森へ」

  • 2015年4月23日(木) 16:53 JST
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リレーエッセイ

・夜の森へ
この森にはムササビが居る。そんな感じはしていたものの確証は無く月日が流れていきました。
ある時、夜の森で鳴き声を聞いて「これはもしかして・・・」と帰ってからネット動画で確認してみたところ、やはりムササビの鳴き声でした。疑問は確信に変わりムササビを見たいと思うようになりました。夜の森へムササビを見に・・・と言っても、ただ行ってボーッっとしているだけでほとんどは鼠を迎える箱に設置したセンサーカメラのカードやバッテリー交換に通う日々でした。
あまりはっきりと撮ることは出来ないのですが登場時間に傾向があるような気がしています。
エサを置いているから来てくれるのでしょうが何より鼠が来てくれることが嬉くてたまりません。
以下のような画像が撮れています。ある一週間の様子です。中心の丸い上の物の内径は40mm、鼠が上の物を横に動かして出てきた下の物の内径は50mmです。



・奇妙な鳴き声
そんなある夜から奇妙な鳴き声を聞くようになりました。
「キキィ、キキィ」という何やら鳥のような感じのする鳴き声でした。

それから1ヶ月ほどたった夜、かなり自分の位置に近いところからその鳴き声が聞こえてきました。
しかもその鳴き声は近付いてきます。あまり待つという根気は無いのですがみるみる近付いてくる感じだったので待っていました。
その声の主は・・・子フクロウでした。



最初はこちらなど眼中になく一生懸命何かに向かって鳴いていました。
写真を撮っているとこちらに気付き「んん?」というふうに振り返りました。(上の写真です)
その後しばらくはこちらを珍しいものでも見るような感じで見ていました。
一生懸命に鳴いていた相手は兄弟のようでした。お互いの存在を確認するように鳴いていました。



その翌週も期待しながらいそいそと森へ足を運ぶのでした。

・ムササビとの遭遇
その夜はムササビの鳴き声を多く聞いていました。
遠くの高い木に居るムササビも確認出来ました。
ある時、高い神木の上に居るムササビと空間を隔てて森の高い木に居るムササビの2頭が同時にこちらを見ていることがあり、一方がグルルルッと鳴くともう一方がそちらを見て反対側のもう一方が鳴くとそちらを向くということがあってこちらも気になるけど相手のムササビも気になるんだなぁと思いました。
姿を見かけなくなり階段でただじっと座って待っていました。一応、無心になっていたつもりです。
しかしここでも根気が無いので30分程するともう帰ろうと思うわけです。
もう帰ろう、と立ち上がり歩き始めると・・・

バババババッとすごい音が頭の上を通り過ぎる音がし、その後バーーーン、わさわさと木の葉が大きく揺れる音がしました。

はっ、として目の前の木をライトで照らすとムササビがこちらを見ていました。
あっ、ムササビだ!!
とあわててカメラで撮りますがなかなかうまく撮れません。その時、何とかまともに撮れたのがこの一枚です。



しばらくはこちらを見ていたのですがもうこちらなど眼中に無いといった感じで去っていってしまいました。
おそらく後ろの大きな神木から滑空し自分の目の前にあった木に減速しながら着地したようです。
バババババッという大きな音がしたのは皮膜のビビリ音で着地した木にはよく見るとテカテカの着地痕がありました。
その後もこの位置でおそらく滑空しているのだろう音を聞きますがほんとに”ブーン”、”ブーン”という座布団が飛ぶような音がします。先人の表現力に脱帽します。
この位置がこの森の中では大滑空なほうのポイントなんだろうと思います。
滑空しているのをみかけますがたいていフワリと柔らかく着地しているようです。

・ムササビとフクロウの関係?
ムササビが出ないか待っているとおそらくムササビが激しく喧嘩?しているような音を何度か聞いたことがありました。
どう表現していいのかわかりませんが樹上で猫がケンカしているような感じの音です。
その激しい鳴き声のあたりをライトで照らしてみるのですがたいていは何もわかりません。
があるとき監視塔からサーチライトで右から左へと照らすようにスーッと動かして見ていると・・・
特に変化はないのですが、ん?と思い左から右にスーッと戻すと・・・
フクロウがこちらを見ていました。
あっ、フクロウだっ!カメラを用意しようとしますがすぐにフクロウはこちらに向かって飛び立ちました。
カメラを構えるのは間に合いません。フクロウは私の頭上をかすめるように飛んでいきました。
一応流し撮りしましたが確認すると残念な写真ばかりです・・・
唯一、端に半分だけ写ったものがありました。トリミングしているので実際は本当に端っこです。



ムササビが鳴いている時はフクロウの鳴き声があまりせず、フクロウの鳴いている時はムササビの鳴き声があまりしない・・・ような気が何となくしていてこの時の猫のケンカのようなものはフクロウとムササビで何かあったのかな?と思いましたが実際のところはよくわかりません。

・再会
最近は森に入るときに10本爪のアイゼンを使用しています。斜面のきついところがあり、落ち葉や枝でずっこけながら歩いていて不便に思ったので購入しました。靴は滑らなくなりましたがふだんとは違う足の筋肉を使うようです。。
そんなアイゼンを使いはじめて2回目ことでした。
夜の森でしばしの時間を過ごした後、神社の階段の下でアイゼンに付いた葉っぱや土を落とし帰ろうと思っていた時に「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」と何やら荒い息遣いが聞こえてきました。ふと下の道を見ると犬?らしき動物が2頭、こちらに向かって走ってきます。
犬の散歩??と訳が分からないままボカーンとしながらよく見ると・・・
えっ?ア、アナグマ??またこちらに向かって走ってきます!!息を切らしながら走っています。
手に持っていたアイゼンをほっぽり出し、カメラを向けます。しかしながら・・・結果的に撮れませんでした。。ちょうどレンズとカメラを新調したばかりで使う側の問題なのですが・・・不覚でした。
今度は自分に向かって走ってきたのではなく、走っている進路上にたまたま自分が居たという感じでした。
1頭は自分の前で一度は立ち止まりましたがすぐに自分の脇を突破し笹藪に入って行きました。もう1頭はカメラに四苦八苦している自分の前にしばらく立ち止まっていましたが振り返って反対方向の藪に入って行きました。
きっと以前に会った兄弟のアナグマに違いない・・・と思いつつ撮れなかった悔しさとともにカメラのセッティングと遅すぎるテスト撮影をしたのでした。。20:30頃の出来事です。
でも、あの兄弟は元気だった。この森に来ていればきっとまた会える。と思うことにしました。



・再び奇妙な鳴き声
ギャアギャアという鳴き声を聞くようになりました。
同時にホゥホゥホホッホホゥホゥ(私がフクロウの鳴き声を書くとこうなります)というフクロウの鳴き声がすることもありました。
フクロウの鳴き声

樹上性の生き物だろうというのはわかりましたが何なのかさっぱり見当がつきませんでした。
その鳴き声の主は若いフクロウのようでした。



ギャアギャアという鳴き声の前や合間に聞こえてきた大人のフクロウの鳴き声は親のものかもしれません。

・夜の森
夜の森にいると様々な音が聞こえます。
手元に持っている電子辞書に野鳥の鳴き声が入っていてその鳴き声によるとコノハズクやトラフズクもこの森に居るのだろうと思います。もちろんそれらしい鳴き声は聞いたものの姿を見たことはありません。
あとになってわかったことですが「キキィ、キキィ」や「ギャアギャア」といった鳴き声も表現は違いますが野鳥の本のフクロウの欄に載っていました。でも実際に聞いてみたからわかるもので文面で読むだけではわからなかったと思います。自分の書いている文章の表現もどれだけ正しいものかわかりません。
実際に森のなかを歩くと自分の歳のせいもありますがすごく疲れます。根気も無いのですぐ帰ろうとするのですがムササビなどを見つけると疲れやら何やらすべて吹き飛んでしまいます。楽しいです。同じ場所に現れてくれるとまた来ようと思ってしまいます。
夜の森で耳を澄ますと鉄道や車の音など人の営みも聞こえてきます。最近は北陸新幹線と思われる音も聞こえるような気もします。水田に水が張るとカエルの合唱も聞こえます。もちろん森の生き物たちの営みも聞こえてきます。
そんな夜の森も朝を迎えてゆきます・・・・

岡本 毅(おかもと たけし、石川県在住)

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