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第48弾「野鳥の楽園から~行徳鳥獣保護区~」

  • 2016年2月11日(木) 13:03 JST
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リレーエッセイ
 行徳鳥獣保護区は東京湾の奥、千葉県市川市の市街地にある55haの人工湿地帯です。高度経済成長期に東京湾の埋立が進む中「野鳥のすみかを守ろう」と自然保護運動が起き、結果として埋立地に造成された場所です。隣接する宮内庁新浜鴨場と併せて約83haの行徳近郊緑地特別保全地区として、「生きものの暮らしを最優先、人の利用は最小限」を理念に東京湾岸、かつての江戸前の原風景再現を目指しています。年間100種以上の野鳥や国内の分布最北限のトビハゼ、いまや絶滅危惧種のウナギなど多様な生物が生息しています。

 当初は草もまばらな荒地だった保護区には生活排水・雨水を水源とする池や棚田が造成され、淡水湿地を形成しています。栄養豊富な生活排水は、湿地を流れる間に多くの植物・生物を育て、やがてそれらが水鳥の餌となります。池を通った水は最終的に保護区の海面に注ぎ、淡水から汽水、海水へとつながる環境を作り出しています。水辺環境の創出・水の浄化・水鳥誘致の一石三鳥を目指している訳です。東日本大震災では液状化や地割れ、干潟の一部消失など保護区にも大きな影響がありましたが、復旧工事も行われ、生物たちも新たな環境に再び定着してきています。

 保護区管理作業の大半は草刈。誘致を目指す淡水性のシギ・チドリ類は浅く開けた水面を好むのですが、富栄養化した水が水源なこともあって夏場はどんどん草に覆われていき、半月も放置すると観察路も通行不能になる勢い。造成後約40年を経た保護区には鳥たちが糞として落とした種から育った樹木も生い茂り、湿地帯というよりは樹林帯化が進んでいます。
 そんな保護区でのカヤネズミとの出会いはほぼ草刈作業中。成体を見たことはまだありませんが、草刈・稲刈中にはたびたび球巣と出くわします。刈る作業に没頭しているので勢い余ってうっかり刈り倒してしまう事も・・・ 水鳥のために植生遷移を人為的にリセットしている場所なので、草地環境に住むカヤネズミには毎回申し訳ない気持ちで一杯ですが、何せ自然の力の方が強力ですから、彼らは草刈が追い付かない場所を見つけてそれなりに上手くやっているようです。

 保護区を望む一画には野鳥観察舎と野鳥病院があります。野鳥病院はケガや衰弱等で保護された野鳥の収容施設で、県内各所から年間350羽を超える傷病野鳥を受け入れています。再び野外へ戻れるのは3割から4割程。電線や窓ガラスなど人工物への衝突事故で翼や脚が折れるなど、野外復帰不能の個体を中心に常時150羽以上を世話しています。
 野鳥観察舎は40台以上の望遠鏡を備え、野鳥観察・自然観察や普及啓発・研究活動の拠点だったのですが、耐震強度不足のため昨年末で無期限休館となってしまいました。千葉県は「建物は取り壊し、県立施設としては廃止」「後継については県と市川市で協議」の方針との事で存続の危機にあります。
 管理するには広大ですが、生き物から見れば小さな保護区。人手も資金も限られる中、多様な生き物たちの暮しを守ろうとあれもこれもと欲張っていろいろやっています。是非街中に出来た生き物の楽園を見に来てください。そして私たちの活動をどうぞ応援してください。

野長瀬 雅樹(のながせ まさき、NPO法人行徳野鳥観察舎友の会)

【行徳野鳥観察舎休館に関する千葉県連絡先】
千葉県行徳野鳥観察舎休館について(千葉県自然保護課)
あなたの声を県政に・・・ お聴きします ちば
観察舎休館について(野鳥観察舎ブログ)

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