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第51弾「豊かな自然体験を子ども達に」

  • 2016年6月28日(火) 13:09 JST
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リレーエッセイ

カヤネズミ調査地の環境
16年前に標高300mの中山間地にある土地を夫と一緒に見に来ました。そしてその自然の素晴らしさに魅かれて、いつかここで生活したいと土地を手に入れました。あれから10年、子育てや親の介護、仕事等、様々なことを終えて大阪からこちらに移り住みました。今年で6年目です。

こちらに移る前、ここは青々とした水田が広がっていました。でも、田んぼを覗くと生き物の姿が全く見えないのに愕然としました。数年前から休耕田、放棄田が目立つようになってきたので、地権者の方にお願いして休耕田を4枚借りました。今から3年前のことです。

2枚は田んぼビオトープ、あとの2枚は米作りと畑に使いました。米作りは初めてで、古代米の赤米を作りました。芒(のぎ)がすごく長くてイノシシもそばまで来て退散(足跡がありました)、被害に遭わずにすみ予想以上の収穫。でも芒(のぎ)が長くて籾摺りにと借りた機械が使えず、結局、田植え、稲刈り、脱穀(手製の穂こきや千歯こきを使って)、籾摺りと全てを手で行う羽目になりました。昔はお米を食べるのに大変な労力を要しただろうと当時の人達に思いを馳せました。収穫したお米は半分を籾摺りするのがやっと…。それでも田植えからイネが育って稲刈りまで変わっていく光景を見たくて、少しであっても毎年米作りを続けたいと思っています。

80才を越えた地権者の方は、今では休耕田を私たちの好きなようにしていいと言ってくれます。
草刈りが大変ですが、刈った草を集めて焼くという作業を続けていたら、オミナエシやリンドウ、コマツナギ、タツナミソウ、サクラタデなどの草花が増えてきました。田んぼビオトープには、ミズオオバコが美しい花を咲かせます。水田があった頃にはほとんど見られなかったアカガエル類の卵塊が、今年は田んぼビオトープと周辺で400卵塊を超えました。


卵を背負ったオオコオイムシ

冬期に、今まで近づき難かった放棄田で草刈りをし、草を燃やしました。そうしたら、今はススキの株が点在する明るいカサスゲやマコモの草原になり、カサスゲの中を覗くとサワヒヨドリが大きく育っています。カヤネズミの新巣もたくさん見つかりました。以前からあったノカンゾウの株は一回りも二回りも大きくなりました。
何より驚いたことは、昆虫類、爬虫類、両生類、哺乳類…種類と数の多いこと!田んぼビオトープも草原も生物の宝庫だと日々実感しています。これで田んぼ、草原、ため池、小さいですが山を含めて、里山の環境がほとんど揃いました。


稲わらを積んだ所(わらにお)で見つけた越冬巣

ところで、ここでは米作りはおじいちゃん、おばあちゃんの仕事で、若い人は会社に行き、跡継ぎはいません。機械化、農薬、除草剤で今は何とか米作りが成り立っています。そんなわけで、ここの子ども達は川や田んぼに入ることを禁止され、都会の子ども達以上に生物を知りません。
6月17日に地元の小学5年生が来て、草原と田んぼビオトープで授業をしました。ここでは農薬等の心配がなくみんな泥んこ、いい笑顔でした。地元の子ども達に田んぼの素晴らしさを伝えたい、そんな私の夢が一つ叶いました。
田んぼだけでなく、草原や多種多様な生物がいることの素晴らしさも感じてくれたことでしょう。私達の活動で生物に興味を持ち、好きになる子どもが増えたらいいな。これからは、活動を知ってもらう働きかけや継続できるようなしくみ作りが課題です。

石原 八束(いしはら・やつか、岡山県在住)

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