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第67弾「セトウチサンショウウオ飼育記」

  • 2020年9月18日(金) 19:00 JST
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リレーエッセイ
セトウチサンショウウオは体長約10㎝の小型サンショウウオの仲間で、以前はカスミサンショウウオと呼ばれていました。しかし2019年に発表された論文で9種に再分類され、カスミサンショウウオと呼べるのは九州(対馬、壱岐、福江島を含む)に分布するものだけになりました。当地のものはセトウチサンショウウオ(以下、セトウチ)と呼ばれます。休耕田4枚に水を張っていると、当地でもセトウチが産卵していることに気づきました。幼生は毎年4㎝くらいまでは成長しますが、その後は水が干上がって死んでしまったり、天敵に食べられたり、行方がわからなくなったりで変態まで見届けることができませんでした。それで、今年初めてセトウチを飼育することにしました。

(注)セトウチサンショウウオは岡山県の絶滅危惧Ⅰ類です。そのため、今回の採取・飼育はセトウチサンショウウオの保護の
目的で行っているものです。
 
(1)卵のう
メスは1対のらせん状の卵のうを産みます。卵のうの中には50~140個の卵が入っています。飼育したのは2月23日に水路で見つけた卵。すでに発生が始まっていました。卵のうを見つけてからおよそ20日後、体長約1.5㎝の幼生が卵のうから出てきました。


卵のう

卵のうから出た直後の幼生

(2)「ヒレ」から「あし」へ
それからさらに1か月半後、体長は2倍の約3㎝に成長。横幅も出て、しっかりした体格になりました。数日後、4本の「あし」が出ているのに気づきました。同じ両生類でも、カエルは後あしから出ますが、セトウチは前あしが先に出ます。セトウチの「あし」について、ウェブ上に次のような詳しい記述がありました。『孵化直後は魚のよう。やがて体前部にヒレが生え、それが趾(あしゆび)のある「あし」に変化する。前あしが完成するころ、体後部にもヒレが出ていて、前あしより遅れて「あし」へと変化する。趾は前あしが4本、後あしが5本。』。産卵からおよそ3か月。体長こそ約4㎝とあまりかわりませんが、食欲旺盛で体色も濃くなり、随分しっかりした体格になってきました。幼生特有の外鰓(がいさい。外えらのこと)は目立ちますが、水中を「あし」で歩いて移動する姿は成体のようです。

(3)飼育の餌について
幼生が小さいうちはおそらくプランクトンやミジンコ類を食べているのでしょうが、水の冷たい時期に十分な量を野外で採取するのは困難なので市販されているブラインシュリンプで代用。少し大きくなると田の泥の中から採取したアカムシ類(ユスリカの幼虫)やイトミミズを、不足する時は市販の冷凍アカムシを与えました。本来の環境から採取したものと市販のものを組み合わせることで餓死させてしまうことなく飼育できました。

(4)変態
産卵からおよそ4か月。飼育中のセトウチのうち2頭の外鰓が無くなり、変態したことを確認しました。

 
(5)飼育を終えて
飼育のために家に持ち帰ったのは1対の卵のうのうちの1つ。ざっと数えて20頭の幼生がいました。成長にバラツキがあって共食いの心配もあったし、飼育も大変になってきたので、変態直前に放流するということを繰り返しました。
そしてそのうちの4頭は変態後もしばらく飼育、観察したあと、水辺より少し山に近い所で放しました。結局共食いもなく、飼育した幼生のほぼすべてを放すことができました。

(6)セトウチが生きていくために
セトウチは、成熟するまでの2~3年を山や雑木林で過ごし、成熟すると産卵のために水がある場所に降りてきます。そういう生活を支えてやるために、雑木林や田んぼビオトープの環境整備を続けて頑張っていきたいです。

田んぼビオトープの泥の中でセトウチの餌を探しながら、ふと見上げると飛来したばかりのブッポウソウ。空を飛び交う、子育て中のツバメやコシアカツバメ。周囲はカヤネズミが生息するススキやチガヤなどの草はら。セトウチもこんな豊かな環境の中で生きているのだと思いました。

石原 八束(いしはら・やつか、岡山県在住)

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